カナダの生活情報

カナダの多文化主義とは?歴史・特徴・留学生活への影響

 

【この記事の要約】

  • カナダの多文化主義政策、統計からみる多文化性について詳しく解説しています。
  • 留学生がカナダの多文化主義を感じる場面について理解することができます。
  • 多文化主義でも残る課題について触れています。

 

カナダでは異なる文化的背景を尊重し、公平な社会参加を支える政策として「多文化主義」を掲げています。これは、移民が多いという人口構成だけを表す言葉ではありません。本記事では、制度の歴史や統計、留学生が現地で感じる場面、そして残された課題を分けて解説します。

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カナダの多文化主義とは

カナダの多文化主義とは、文化の違いを消して一つの型へ合わせるのではなく、背景の違いを尊重しながら社会参加を支える連邦政策です。文化的な多様性を認め、参加を妨げる障壁を減らすことも方針に含まれます。

カナダの多文化主義を理解するには、人口構成、政策、個々人の考え方を分けて考える必要があります。3つの違いを整理すると、以下の通りです。

観点 意味 混同しないための注意点
多民族・多言語な人口構成 異なるルーツや言語を持つ人が暮らしている状態 人口の事実であり、政策そのものではない
多文化主義という政策 多様性の承認や公平な参加を支える国の枠組み すべての現場で目標が達成しているとは限らない
個々人の考え方 相手への接し方や価値観 国籍だけで考え方や性格を決めつけない

出典:Canadian Heritage「About multiculturalism and anti-racism」(2026年8月確認)

出典:Justice Laws Website「Canadian Multiculturalism Act」(2026年8月確認)

カナダが多文化主義を掲げているからといって、すべての人が同じ考えを持つわけではありません。制度が目指す方向と、学校や職場での実際の経験を区別すると、カナダの多文化主義をより理解しやすくなります。

カナダが多文化主義を政策にした歴史

カナダの多文化主義は、文化の多様さを表す呼び名だけではなく、政策と法律を通じて形づくられてきました。主な節目は、1971年、1982年、1988年です。

1971年に公式政策として採用

カナダは1971年、世界で初めて多文化主義を国の公式政策として掲げました。英語とフランス語という2つの公用語は維持したまま、それ以外の文化的背景も尊重するという方針です。

この政策が目指すのは文化を同化させることではありません。同化とは、異なる文化を持つ人々を一つの文化に溶け込ませる考え方です。多文化主義はその逆で、それぞれが自分の文化を保ったまま社会に参加し、互いを理解し合うことを目指しています。

1982年の憲章と1988年の法律

1982年には、多文化的な遺産の維持と向上に沿って権利や自由を解釈する原則が憲章27条に示され、1988年に多文化主義は連邦法に明記されました。

出典:Department of Justice Canada「Section 27 – Multicultural heritage」(2026年8月確認)

法律は、文化的・人種的な多様性の承認、文化遺産を保ち共有する自由、公平な社会参加などを政策として掲げています。法律があることは、差別や参加の障壁が解消された証明ではありませんが、国としてこの理念を目指す姿勢を示すものだと言えます。

統計と生活から見るカナダの多文化性

カナダの多文化性は、統計にも表れています。たとえば、移民の割合、国勢調査で申告された民族的ルーツ、地域ごとに話されている言語などです。これらの数字が何を数えたものかを確認しないと、留学生や非永住者の人数と混同してしまう恐れがあるため注意しましょう。

2021年は人口の23.0%が移民

2021年国勢調査では、移民は8,361,505人で、人口の23.0%を占めました。この統計の「移民」は、永住権を取得した人や過去に取得していた人を指します。

出典:Statistics Canada「Immigrants and non-permanent residents statistics」(2026年8月確認)

学生ビザで滞在する留学生などの非永住者は、同じ定義には含まれません。また、移民であることと、特定の人種や文化的背景を持つことも別の概念です。

450を超える民族的・文化的ルーツが報告された

2021年国勢調査では、450を超える民族的・文化的ルーツが報告されました。この調査結果からも、さまざまな家族の歴史や文化的背景を持つ人が暮らしていることが分かります。

出典:Statistics Canada「The Canadian census: A rich portrait of the country’s religious and ethnocultural diversity」(2026年8月確認)

ただし、この数字は回答者の自己申告に基づき、複数のルーツを回答した場合も含みます。「カナダに固定された450以上の民族がある」という意味ではなく、回答されたルーツの多様性を表す資料として捉えましょう。

公用語と日常の言語は地域で異なる

カナダの公用語は英語とフランス語ですが、生活で中心となる言語は地域によって異なります(IRCC「Improving your English and French」)。たとえば、ケベック州ではフランス語が主に話されるため、英語圏の都市と同じ前提では過ごせません。

多言語社会であっても、誰もが英語とフランス語を話すわけではありません。留学先を選ぶ際は、国全体のイメージではなく、都市や学校で使われる言語を確認してください。

カナダの公用語と地域ごとの言語環境では、英語とフランス語の地域差を詳しく紹介しています。

なお、カナダの先住民族(Indigenous Peoples)であるFirst Nations(ファースト・ネーションズ)、Inuit(イヌイット)、Métis(メティス)は、カナダという土地にもともと暮らしてきた人々であり、移民によって加わった文化とは異なります。先住民は植民地化の歴史や、現在も続く権利・和解の課題を抱えています。そのため、移民が持ち込んだ多様性とは分けて考える必要があります。(Department of Justice Canada「Principles respecting the Government of Canada’s relationship with Indigenous peoples」)。

留学生が多文化主義を感じる場面

留学生が多文化性を感じやすいのは、学校、滞在先、地域の集まりなどです。ただし、多様な人がいる環境へ入るだけで、交流が自然に深まるとは限りません。実際の体験談も交えながら、多文化主義を感じる場面についてみてみましょう。

学校や地域で異なる背景の人と出会う

学校や地域では、国籍だけでなく、言語、宗教、年齢、家族構成が違う人と出会います。同じ国の出身者でも、育った地域や本人の経験によって考え方はさまざまです。

出身地だけを見て、その人の性格や価値観を決めつけないようにしましょう。悪気がなくても、それは固定観念につながります。大切なのは、まず本人の話を聞き、分からないことは直接確認する姿勢です。

参加行動から交流を広げたRinaさんの体験談

30歳でトロントへワーキングホリデーに渡ったRinaさんは、6週間の語学学校に通いながらホームステイを経験しました。学校には幅広い年代や、さまざまな背景を持つ学生が集まっており、渡航前に感じていた「年齢への不安」は次第に和らいだそうです。

Rinaさんは、友人からの誘いや学校行事に積極的に参加し、クラス替えのたびに新しい交友関係を広げていきました。学校の外で開かれるミートアップにも足を運んでいます。友人が増えたのは、多文化な環境にいたからというより、Rinaさん自身が無理のない範囲で行動を重ねた結果だと言えます。

食事・呼び方・祝日の違いは本人へ確認する

カナダでは異なる背景の人と関わる場面があり、食事、名前の呼び方、行事への参加などで「どうすればいいだろう」と迷うことがあるかもしれません。その際も、外見や出身地だけを見て、その人の宗教や食習慣を決めつけないようにしましょう。

名前の発音が分からなければ、遠慮せず本人に聞いてかまいません。食事を用意するときは、食べられないもの(宗教上・体質上の制限など)がないか確認しましょう。

カナダの多文化主義を留学で学ぶ利点

多文化環境で学ぶ価値は、違いを眺めることではありません。相手がどう考えているかを尋ね、自分の当たり前を言葉にして説明し直す経験にこそ意味があります。「言わなくても伝わる」という思い込みは持たないようにしましょう。

カナダでの日常の会話では、さまざまな英語の発音や表現に触れられます。ただし、その環境にいるだけで英語力が伸びるわけではありません。分からない表現を聞き返し、自分の考えを言葉にする行動が英語力の向上や学びにつながります。

相手の文化を「珍しい」の一言で終わらせず、本人がどう考えているかを聞いてみてください。そうした対話を重ねることで、意見が違うときの確認の仕方や、共通点を探す進め方が自然と身についていきます。

多文化主義があっても残る課題

多文化主義は、差別が存在しないことを示す制度ではありません。平等な参加を目指す枠組みがある一方で、不公平な扱いを経験した人もいます。

差別や不公平な扱いがなくなったわけではない

カナダ統計局の調査では、2021〜2024年の間に、15歳以上の「人種化された人々」の51%が、過去5年間に差別や不公平な扱いを経験したと答えています。これは、人種化されていない人々(27%)のほぼ2倍にあたります。

出典:Statistics Canada「Half of racialized people have experienced discrimination or unfair treatment」(2026年8月確認)

ここでいう「人種化された人々」とは、統計局が独自に決めた区分ではなく、カナダの雇用機会均等法という法律にもとづく統計上の分類です。この法律では、先住民族を除いて、肌の色や人種的な見た目が白人ではない人々(可視的マイノリティ)を指すと定義されています。また、移民や留学生と同じ意味でもないため、この数字が誰を指しているのかを混同しないよう注意してください。

差別や不公平な扱いに遭ったときは、一人で文化の違いとして片づける必要はありません。日時、場所、相手の発言や行動、目撃者の有無を記録し、学校の学生支援窓口や、職場であれば所定の手続きを確認しましょう。

一つの文化や国籍で相手を決めつけない

否定的な固定観念だけでなく、「カナダ人は全員寛容」「この国の人は親しみやすい」といった肯定的な決めつけも避けるべきです。どちらも、相手を一人の個人としてではなく、国籍で判断することにつながります。

Indigenous Peoplesについても、「カナダにある多くの文化の一例」として一緒くたに並べるのは適切ではありません。First Nations、Inuit、Métisはそれぞれ異なる歴史や文化、権利を持つことを前提に捉えてください。

留学生が現地で意識したい4つの行動

多文化環境では、相手を知るために確認し、困ったときに記録と相談を行うことが重要です。現地生活で意識したい行動を4つにまとめます。

  1. 名前の発音や食事、宗教上の配慮は、推測せず本人へ確認する。
  2. 地域と学校で使われる言語を、渡航前に調べる。
  3. 学校行事や地域の集まりへ、無理のない範囲で参加する。
  4. 差別やハラスメントにあった場合は日時、場所、内容を記録し、学校や職場の窓口に相談する。

確認するときは、「あなたの国ではどうですか」のように文化全体について聞くのではなく、その人自身について尋ねましょう。多文化環境で意識したいカナダのマナーも、現地での接し方を考える際に役立ちます。

まとめ

カナダの多文化主義は、異なる文化的背景を尊重し、公平な社会参加を支える枠組みです。1971年に公式政策として採用され、1982年の憲章を経て、1988年に法律へ明記されました。

人口や言語の多様性は、留学生が異なる背景の人と出会う機会につながります。一方で、差別や不公平な扱いがないというわけではありません。カナダの多文化主義を理解するためには、制度、統計、個人の考え方を分け、相手の背景を固定概念で決めつけずに確認する姿勢を大切にしましょう。

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この記事を監修した人

諸澤 良幸

諸澤 良幸

株式会社Morrow World 代表取締役社長

日本内閣府認定 NPO留学協会 RCA海外留学アドバイザー
オーストラリア政府認定PIER QEAC留学コンサルタント資格保有
JAOS 一般社団法人海外留学協議会 加盟

4年制大学法学部を卒業後大手レジャー企業に就職。複数の新規店舗立ち上げや人事業に従事した後、退社し26歳で単身海外留学。海外での英語学習と海外現地企業での管理職経験を経て2015年に株式会社Morrow Worldを設立し留学エージェントサービスを提供開始。2024年時点で9年以上留学エージェントを運営しており、「サポート無料留学エージェント」や「2カ国留学」の先駆けとして留学サポートを提供。
2020年6月にはオンラインに特化した英語コーチングサービスENGLEADを開始、2023年からは学研教室オーストラリアのFC本部の運営会社の代表取締役にも就任。
現在世界8カ国、約100名のスタッフと共に、世界で羽ばたく子どもから大人に向けて幅広く教育関連サービスを提供している。

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