英語の発音矯正は独学でどこまでできる?練習手順と確認方法
英語の発音に自信が持てず、独学で直せないかと考える方は少なくありません。
英語の子音は口の形がある程度決まっているため、独学でも練習しやすい音が多くあります。
ただし自分の耳だけでは気づけない癖も残るため、録音や音声入力で客観的に確認する工程と、どこから第三者の耳を借りてチェックしてもらうかをあらかじめ決めておくことが大切です。
独学で直せる範囲と、気づきにくい範囲
発音矯正が独学でどこまで進むのかは、音の性質によって差があります。
独学で扱いやすい範囲と、自分では気づきにくい範囲を分けて整理しましょう。
口の形が決まっている子音は独学で扱いやすい
子音は舌や唇の位置がある程度決まっているため、独学でも形を意識すれば再現しやすい音です。
母音のように微妙な口の開き具合で意味が変わることは少なく、舌先をどこに当てるか、唇をどう使うかという具体的な動きに置き換えられます。
/l/と/r/、th、/v/と/b/といった日本人が苦手意識を持ちやすい音も、口の中の形を理解すれば、独学での練習に取り入れることが可能です。
次の章で扱う音の作り方を先に押さえておくと、練習の効率が上がるでしょう。
自分では気づけない発音がある
一方で、自分の発音の正確さを自分だけで判断するのは簡単ではありません。
英語学習者を対象にした研究ではありませんが、ドイツ語の上級学習者46人が自分の発音を自己評価した研究が参考になります。
この研究では、学習者の自己評価と評価者の判定は全体の85パーセントで一致していました。それでも、評価者が「不正確」と判断した音のうち学習者自身が気づけたのは、およそ半数にとどまっています。
あくまで一つの研究結果ではありますが、上級者であっても自身の発音の弱点をすべて把握できるわけではないことを示す材料といえます。
目標は「ネイティブのような発音」ではなく通じること
発音矯正の目標は、相手に伝わる発音を身につけることです。ネイティブの発音をそのまま再現する必要はありません。
細部の癖が完全になくならなくても、聞き手が意味を取り違えない発音であれば、コミュニケーションは十分に成立します。
苦手な音を後回しにせず一つずつ着実に克服していく姿勢のほうが、独学を続けやすいでしょう。
音の作り方から直す
ここからは、日本人が特につまずきやすい音を取り上げ、口や舌をどう動かせばよいかを具体的に見ていきます。
実際に口の中の動きを確認したい場合は、グラスゴー大学の音声可視化教材Seeing Speechで超音波やMRIの画像をご参照ください。
この章で扱う音は、以下の4つです。
- /l/と/r/
- th(/θ/ /ð/)
- /v/と/b/
- 母音の/æ/と/ə/
/l/ と /r/ の違いは舌の付け方
英語の/l/と/r/は、シェフィールド大学の音声学教材によると「接近音」と呼ばれる音の仲間に分類されます。
接近音とは、舌や唇を近づけるものの、息がこすれる音が生じるほどは狭めずに出す音のことです。
このうち/l/は舌先を上の歯ぐきに当てて発音する「歯茎音」です。ただし舌先が触れていても、息の流れは止まりません。
マニトバ大学の音声学教材は、/l/を英語で唯一の「側面音」とし、舌の脇から息が抜ける音だと説明しています。
舌先を歯ぐきに当てたまま、舌の両脇から息を逃がす感覚がつかめているかが確認のポイントです。
一方の/r/は舌の使い方に個人差や方言差が大きいため、舌を丸めるか盛り上げるかは話者によって異なると考えてよいでしょう。
まずは/l/で舌先の位置を固定する感覚をつかみ、そのうえで/r/は舌先をどこにも触れさせない練習から始めると、両者を区別しやすくなります。
th(/θ/ /ð/)は舌先を上の歯に当てる
th音(/θ/ /ð/)は、同教材で舌先を上の前歯に軽く当てて隙間から息を出す「歯音」に分類されています。
無声の/θ/と有声の/ð/は、舌の使い方は同じです。違いは声帯を震わせるかどうかにあります。
舌先を歯の裏側で止めず、歯そのものに触れさせる感覚を意識すると再現しやすくなるでしょう。
息が舌と歯の隙間から抜けているかどうかも、手のひらを口の前に当てると確かめられます。
/v/ は下唇と上の歯、/b/ は両方の唇
/v/は下唇と上の前歯を触れさせて出す「唇歯音」、/b/は上下の唇同士を触れさせて出す「両唇音」で、同教材の分類では調音点そのものが異なります。つまり/v/は唇を閉じません。
下唇を上の前歯に軽く当てたまま声を出す動きに置き換えると、/b/との区別がはっきりします。
両方を続けて発音し、唇が触れ合うかどうかを鏡で見ると分かりやすいでしょう。
母音は舌の位置で整理する
母音は、舌の前後の位置・舌の高さ・唇の形という3つの軸で整理されます。
同教材の分類では、/æ/は舌を前寄りにして出す前舌の母音、/ə/(シュワ)は舌を中央に置いて出す中舌の母音とされています。
子音と違い、母音は舌がどこにも触れません。
そのため正解の位置を感覚だけで判断するのは難しく、力の入れ方で確かめるほうが現実的です。/æ/は舌を前に置いて出す音、/ə/は口も舌も力を抜いたまま軽く添える音として、対で練習すると違いをつかみやすくなります。
母音も、次の章で紹介する録音で確認できます。
cat を英語として読んだ録音と、日本語の「キャット」を読んだ録音を続けて聞き比べ、母音が同じ音になっていないかを確かめてみてください。
/ə/は、about を「アバウト」と読んだ録音と、最初の母音を力を抜いて短く出した録音を並べると違いをつかみやすくなります。
直ったかどうかを自分で確かめる
発音を練習した後は、正しく直っているかを確認する手段が必要です。
ここでは、独学でも使える3つの確認方法を紹介します。
録音して自分の音を聞き返す
自分の声をスマートフォンなどで録音し、時間を置いてから聞き返すと、話しているときには気づけなかった癖を見つけやすくなります。
練習の最中は口の感覚に意識が向きがちで、実際の音を客観的に評価しにくいためです。
録音するときは、直したい音だけが入れ替わる単語のペアを並べて読むと違いが分かりやすくなります。/l/と/r/なら light と right、/v/と/b/なら van と ban、th音なら think と sink のように、2語を続けて録音します。
聞き返すときは、漠然と「うまいか下手か」を判断せず、章で確認した動きができているかを1つずつ照らします。
/l/なら舌先が歯ぐきに触れた音になっているか、/v/なら唇が閉じずに息が続いているか、th音なら息が舌と歯の隙間から抜けているかという具合です。2語が同じ音に聞こえるなら、そこがまだ区別できていない箇所になります。
音声入力に認識させて確かめる
スマートフォンの音声入力機能に認識させることも、発音が伝わるかどうかを確かめる手段になります。
iPhoneの音声入力は多くの言語で端末上の処理が完結する仕組みで、インターネット接続がなくても利用可能です。
Android端末のGboard音声入力も同様に利用できますが、公式ヘルプでは音声入力がすべての言語に対応しているわけではないと明記されており、対応状況は事前に確認しておくとよいでしょう。
正しく変換されるかどうかは、発音が相手に伝わるかを測る一つの目安になります。
ただし音声入力は前後の文脈から単語を補正するため、単語だけを読み上げたときと文の中で読んだときで結果が変わることもあります。
うまく認識されたからといって、その音が正確とは限らない点は踏まえておきましょう。
発音練習の機能が使える場合は活用する
検索エンジンの中には、単語を検索して発音を練習できる機能が用意されている場合があります。
Googleは2019年に、検索結果に表示される発音カードに向かって話すと、お手本と比較したフィードバックを受け取れる機能をアメリカ英語向けに公式発表しました。
ただし、この機能が現在も同じ形で使えるかどうかは変わることがあるため、表示された場合に活用する程度に考えておくとよいでしょう。
独学の練習を組み立てる
音の作り方と確認方法が分かったら、それらを日々の練習にどう組み込むかを考えます。
1回1音に絞って短時間で回す
一度に多くの音を練習しようとすると、どこが改善したのか分かりにくくなります。
1回の練習では1つの音に絞り、短時間で区切って繰り返すほうが、録音で比較したときの変化を確認しやすくなります。
慣れてきた音から次の音へと対象を移していくと、無理なく範囲を広げられるでしょう。
単語から文、文から通しの音読へ広げる
1つの音に慣れてきたら、単語単位の練習から文単位、さらに文章をまとまりで読む練習へと段階を広げます。
単語だけでは正しく出せていた音も、文の中に混ざると崩れやすくなるため、段階を飛ばさずに広げることが重要です。
留学中の英語勉強法では、音読やシャドーイングを使った練習方法も紹介しているため、あわせて確認しておくと練習の幅が広がります。
伸び悩んだら人に聞いてもらう段階に進む
独学だけで改善が感じられなくなったら、人に聞いてもらう段階に進む一つの目安です。
自分では気づけない癖が残っている可能性があるため、家族や友人、オンライン英会話の講師など、身近な相手に聞いてもらうだけでも新しい気づきにつながります。
特定のサービスを選ぶ前に、まずは独学の範囲でどこまで伸ばせたかを一度整理しておくとよいでしょう。
ワーホリ前の英語勉強法では渡航前の英語学習の進め方も扱っているため、発音以外の準備とあわせて確認しておくと計画を立てやすくなります。
英語の発音矯正の独学に関するよくある質問
発音矯正の独学について、多くの方が気になる点をまとめました。
独学だけで発音は直りますか?
音の作り方を理解し、録音などで確認しながら練習すれば、独学でも発音は変化します。
ただし自分では気づけない癖が残ることもあるため、伸び悩みを感じたら人に聞いてもらう段階に進むことも選択肢にいれておきましょう。
どの音から練習すればいいですか?
日本語にない音の作り方から始めると、変化を実感しやすくなります。
/l/と/r/、th(/θ/ /ð/)、/v/と/b/は口や舌の使い方が日本語の音と大きく異なるため、優先して取り組む価値があります。
発音記号は覚えたほうがいいですか?
すべての発音記号を暗記する必要はありませんが、自分がつまずいている音を発音記号で把握しておくと、練習の対象を絞りやすくなります。
留学前に発音を直しておくべきですか?
留学前に完璧な発音を仕上げる必要はありませんが、相手に伝わる発音を意識しておくと、現地でのコミュニケーションがスムーズになりやすいでしょう。
渡航までの期間を使って、苦手な音を少しずつ減らしておくことをおすすめします。
まとめ
英語の発音は、口の形が決まっている子音から独学で直していき、録音や音声入力で自分の発音を客観的に確かめる工程を挟むと進めやすくなります。
ただし自分では気づけない癖も残るため、伸び悩みを感じたタイミングで人に聞いてもらう段階に進むことも視野に入れておきましょう。
まずは直したい音を1つだけ決めて、録音で確かめるところから始めてみてください。
1音ずつ確実に潰していくほうが、まとめて直そうとするより結果的に早く進みます。
















